親鸞聖人絵詞傳要訳 7

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九歳の春

伯父範綱卿へ仕切りに出家ののぞみを申しているが、十八公麿まだ幼く、その志があっても、年を経て状況が変わってしまえば、今の方向はあやまりになってしまいます。

父母の名をも辱めることなるのを案じるが、かねがね父有範朝臣卒去のとき、入胎・誕生の以後の不思議な様子を思い、行く末は出家となるべき旨の遺命しました。

また性質は常人を超えていることもあるのでついに承諾されました。

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三月十五日 相伴って洛陽粟田口の青蓮院の門室に入りました。

慈圓和尚に拝謁し、ことの成り行きをつぶさに申しあげ、願わくは速やかに得度し、長くそばちかくに侍すことを許して頂きたい旨を伺いました。

慈圓和尚もすごく感心し、このような志あることは、まさしく宿縁で、後に叶うならば大いに化導の道を勧められました。

明日剃髪すると申されたその時、十八公麿は申しました。

生死事大無常迅速(しょうじだいむじょうじんそく)なりと願い、今日剃髪していただきたいと申し上げ、一首の和歌を詠吟しました。

「あすありと思う心のあだ桜 夜に嵐の吹ぬものかは」