親鸞聖人絵詞傳現要訳 1 「親鸞聖人絵詞傳」

 

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親鸞聖人絵詞伝入胎

そもそも下野国高田山専修寺の開山親鸞聖人は、初めには聖道の教えを学び、顕密の奥旨を究めました。

後には浄土の真門に入りて他力仏乗の宗義を相承し、ついに下野の一流を開き末世濁乱(じょくらん)の衆生在家愚痴の輩(ともがら)をあまねく教化しました。

その教化は関東におこり、その後京都におよび、今では(寛政12年)全国に広まりました。

誠に往生浄土の先達、濁世末代の明師であり、遠くその系譜を尋ねると、天神七代のはじめ

天御中主尊(あめみなかぬしのみこと)より四十六代、天児屋命(あめのこやねのみこと)より三十八代、大織冠鎌足公(藤原鎌足)より十八代の日野有範公の息男になります。

母公は源氏にして、清和天皇七代の八幡太郎義家(はちまんたろうよしいえ)の嫡子、対馬守義親(つしまのかみよしちか)の息女で、御名を吉光女(きっこうにょ)と申し、常に菩提心深く、この世の無常を観じていました。

西枕にして寝たところ夢の中に西方より金色の光明がきて、三度身を廻って矢のように口の中に入ったことに驚いて西の方を見ました。

そこには一人の菩薩様がおり、一尺余りの五葉の松一本を持ってこれを授けて、「吾は如意輪なり、汝に奇異の児を生ぜん、必ずこれをもって名とせよ」と申しました。

眼がさめて不思議に思いましたが、こんじきの光明の来現は聖人が西方弥陀如来の応現であることを示すしるしです。

この霊夢は人王八十代高倉のみかど承安二年五月二日の夜半でした。

 

・菩薩、如意輪についての説明

菩薩とは・・・仏教において一般的には悟りを求める衆生を意味します。

如意輪とは・・・仏教における信仰対象である菩薩の一尊。観音菩薩の変化身(へんげしん)の一つであり、六観音の一尊に数えられます。